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イカゴ。有明海沿岸ではこの時期(お盆前後が最盛期)になると体長5〜8cmくらいのイカがどこそこの港の岸壁から網ですくい、捕獲することができる。 大牟田では更に訛【なま】って「ジカゴ」と呼ばれ、熊本方面では主に「ヒイカゴ」と呼ばれている。その呼称からしてイカの子供ですか?という感じなのだがそれは違う。一般的に認知される大きさから見れば確かに子供のようだが正確には子供ではなく、オスは最大66mm、メスは87mmという記録があるらしいので立派な成魚?成イカなのである。有明海沿岸にお住まいの方以外はあまり馴染みないものかもしれないが、この地方では古くからから夏の風物詩として(一部の人に?)有名なのである。 |
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この地方名イカゴは、正式には「ベイカ」と呼びヤリイカ科の一種である。有明海、八代海、瀬戸内海の港湾部にのみ生息している。ムツゴロウと同じく、日本列島が大陸と地続きだった頃に沿岸に沿って分布を広げ、大陸から取り残された、いわゆる大陸系遺留種だそうである。
で、このかわいいイカ君をどうするか、なのであるがもちろん食するのである。食べ方の前にまずは捕獲方法を説明しよう。
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魚釣りをされる方はよくご存知であると思うが、海には月の引力に関係があるとされる潮の満干きがあり、満月や新月(太陽と同じ方向にあるため、月が真っ暗な状態)のときを大潮といい潮の干満差が大きい。そのために潮の動くスピードが速いのであるが、一般的に魚釣りはこの時がよいと認知されている。よって、イカゴすくいもこの時がよいであろうと推測するが大潮前後の中潮でも問題はないと思う。
捕獲方法であるが、イカは灯りに寄ってくる習性をご存知であろうか?思い出して頂きたい、イカが獲れることで有名な漁港に行くと漁船にたくさんの電球が付いている。漁火【いさりび】と言われ、夜、海上にともる灯りは大方イカ獲り漁船である。よって、このイカの習性を利用するものである。
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昔はカーバイトと呼ばれるものを焚いても結構獲れたのだが、何にしろ生き物が少なくなった今ではそれも難しい。最近は小型発電機と投光器(看板を照らすような電球300〜500Wくらい)を使用する人が増えているようだ。その投光器を港の岸壁から吊るし海面を明るく照らすと夜行性のプランクトンや小魚が集まってくる、いわゆる小さな食物連鎖がそこに形成されると思ってもらえばほぼ間違いない。そこへイカゴちゃんもやってくるのである。そこを網で「御用」する訳である。 しかし、小さいからといって侮ってはいけない。突然現れては消えるといったイメージで海面の変化に十分注意しなければ捕獲するタイミングを逃してしまう。また、すくう網は間違っても夏休み学習用の昆虫採集セットのものなどを使用しないことである(まず、獲れない)。出来れば釣具屋で柄が4mくらい延びるものを準備したい。 日によって獲れる数はムラがあるが、あとは捕獲作戦決行のみである。(しぃぃーん、ばしゃ、ばしゃっ!:すくっている音)
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こんなサイズです、かわいいでしょ。 |
すくう時は真剣勝負! |
必殺!捕獲セット、調光器もある。 |
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やっと、食するところまで辿りついた(ふ〜)。もちろん小ぶりなものであれば墨を吐かせて水洗いしてそのままワサビ醤油でまるごとOKだ。但し、吸盤に歯があり噛まれると痛いので少し弱らせた状態でないと口内が危険かもしれないのでご用心を。 一般的には煮付けが多いようだが、個人的にはイカのシーフードパスタなどがお勧めである。
残暑厳しき折、夕涼みに海辺の岸壁でジカゴとビールでアウトドアなんていうのはいかがかな?
(編集注:環境問題などからこのジカゴも年々数が減っているように思う。くれぐれも近所に配る分までと欲を出さず、楽しむ分だけと限りある資源を大切にして頂ければ幸いである。)
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撮影協力 |
蓮尾自動車整備工場(福岡県大牟田市本町) |
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